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<特許>完全性試験機マルチWFDシステム

ベントフィルターのリスク管理を大幅に軽減

疎水性フィルターバリデーションでは、使用後の完全性試験のみが規定され、使用期間等に付いてはユーザーサイドで諸条件を考慮し決定する事となっている。

このプログラムの大きな問題点は使用後の完全性試験で不合格となった場合である。使用期間中に定期的にウォーターイントリュージョン試験(WI試験)等で完全性を確認する手法を取り入れている事例は多いが、その頻度は数週間~1ヶ月に1回程であり、薬液濾過フィルター二次側に位置するベントフィルターのみに対して実施している事例が多い。万一完全性試験が不合格となった場合、その間に製造した製品の無菌保証に対し苦慮する事は必然である。これは非破壊試験である WI試験手法の難易度が高い事に起因する。通常手法では1本のベントフィルターに対し1時間程の時間を要する。しかも試験環境や条件に左右される事が多い。合格値を得るためにフィルターハウジングや使用水を冷却したりしている事例も見受けるが、これは明らかなデータのメイキングに他ならない。

WI試験を簡単に通常の現場的な環境で多本数を短時間で実施することができれば、試験のインターバルを短くできリスクを極限迄減少させる事につなげることができる。そこで先般、このWINTESS/マルチWFDシステムを導入された製薬会社様での事例と評価を紹介する。

現行システム

  • 使用フィルター:疎水性メンブレンフィルターカートリッジ
  • WI 量規定値 :≦ 0.74 mℓ/min
  • WI 試験所要時間  他社製試験機使用時  1本当り40~50分
  • 使用圧力源:チッソガスボンベ

問題点

  • 一本当りの試験所要時間が長く、頻繁な管理が行えない。
  • 従って、毎日製造があることもあり重要部分のみでも月1回程しか実施できない。
  • 温度変化に弱く、部屋内の温度と試験水温度が安定する迄正確な測定が困難。
  • 窒素ガスしか使用できず、クリーンルーム内での測定が困難
  • その他

新システム

  • 使用フィルター: テフロクリアーT002 5インチ及び10インチカートリッジ
  • WI 量規定値 :5インチ = 1.5mℓ/min   10インチ = 3.0mℓ/min
  • WI 試験所要時間 WINTESS-D10 使用時  5本当り約10分間
  • 使用圧力源:コンプレッサーエアー又はチッソガスボンベ

新システムの測定手法、有効性及び運用条件に付いて

WI試験は二次側から流出する水の量を測定するが、WFD(ウォーターフローディフュージョン)試験は一次側の水の移動量を測定する。マニュアル測定時には測定対象が異なる訳であるが、完全性試験機を使用して測定する場合、水とガスの圧縮率を係数として試験機に入力する事でどちらの試験も一次側のガス移動量として測定できる。マルチシステムで運用する場合、管理基準値を1本当りで設定しておくことにより、複数本のフィルターを測定してもその合計量が1本当りの許容量以下であれば全てのフィルターが許容範囲に入る事となる。正確で再現性のある高精度完全性試験機と管理基準値の大きい疎水性フィルターを選択する事が必要不可欠な条件となる。

WINTESS/マルチWFDシステムのメリット

当然の事ながら、1本当りの管理基準値が大きければ大きい程多数のフィルターを同時に測定できる事になる。テフロクリアーPTFEカートリッジは他社同等品に比して管理基準値が大きく、5~10本程の疎水性フィルターを同時に測定できる。所要時間はおよそ10~15分程度である。

運用試験結果

某製薬工場に於いて、4ヶ月間(SIP回数80回/逆圧側からのSIP)の運用結果、毎日1度の完全性試験において5本用WFDシステムは良好な結果であった。

今後の運用

今後は最重要部のベントフィルターに付いては毎回使用前後のマルチWFD試験を実施する。このため取り替え用のフィルターを用意し、製造後に試験済のフィルターと取り替え、使用したフィルターの完全性試験を行う。この作業により、ろ過後の試験がろ過前試験を兼用することになり作業工程を減らすことができる。これを毎回繰り返す。最重要部以外のフィルターに付いても予備を持ち、週一度の交換を実施する。5将来的にはインラインマルチ測定を計画している。

<特許>完全性試験機マルチWFDシステム